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肝腎要(かんじんかなめ)

肝機能に異常数値が出たとき、すでに肝臓の80%は機能していないのだそうです。
腎臓に異常数値が出たとき、すでに50%は機能していません。

ただし両者に違いがあります。
肝臓の場合は再生力が非常に強いので、節制することによって、元に戻ることが多い。それに対して腎臓は再生力がない。つまり、そのままか、悪くなる一方か、まあ、どちらかです。

先日、テレビで腎臓に関する実に興味深い特集をしていたそうです。
残念ながら小生は見逃してしまいました。

観た人の話によると、腎機能低下と診断された人の病気の発症率、5年以内に脳卒中、心筋梗塞が発症する割合24%、腎不全が1%とのこと。

これは実に興味深い事実。
東洋医学での「腎」は非常に広い概念を含んでいて、単に「腎臓」という臓器を指すものではないということはご存知のことと思います。

腎機能が低下することによって起きる症候群を示した概念だと言えなくもないわけです。
期せずして、それが証明されたような統計ではないでしょうか。

腎機能低下は動脈硬化を加速させます。
それによって血管系の疾病がおきやすくなるのでしょう。

東洋医学での見解は、先に「肝」に邪気がたまり、邪気が内向し、深くなると「腎」に移行してくるとしています。
これもなんとなく分かりませんか?

一般論としては述べたように肝臓には強い再生力がありますから、肝炎に罹っているとか、無防備なライフスタイルを送らない限り、大事には至りません。

ところが腎臓は実に治りづらい、しかも、一見、腎臓とは関係がないような血管系の疾病リスクが高くなるわけでしょ。
どちらの病が深いか?

あくまで一般論ですが、腎臓であることは明白です。
そういう意味で邪気の内向度で言えば、「腎」のランクが高くなるわけです。

現在、日本には治療を要するほどに機能が低下している腎疾患者は500万人いると推定されています。ところがこのほとんどが本人も気づかず、治療はもとより、節制すらしていないのです。これだも、脳卒中や心筋梗塞が減らないはずですね。

国民皆保険制度がある日本においてさえ、そうなんですよ。ましていわんや他国においてをや。

肝臓も腎臓もその機能の相当部分を失わない限り、自覚、他覚症状が出ない、という意味でも肝腎は要なのでした。

そして面白いことに省略系の古典経絡では両者(肝経、腎経)とも足に走行しているとしていますね。

さらに腎経に至っては唯一、足裏に配当させています。
正穴では「湧泉」一箇所。

鍼をこんなところに打つことはまずないわけですから、ここは手技を使ったものかと思われます。

いずれにしても、肝腎の要が省略形においてさえも足に走行を認めたという古人の知恵を生かさない手はありません。

結局、肝腎が要であるならば、足もまた肝腎の要なのですから。

※現在、肝心と表記することが多くなっていますが、もともとは肝腎と書きました。
誤記する人が多いため、肝心も有りだということになって、さらに、標準的には肝心にしようと決めたようです。繰り返しますが、本来は肝腎が正しいのです。

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