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古典の妙-灸

(一)

鍼は専門外で、たまにスタッフKにインチキ鍼をやる程度です。
それでも、その道の大家といわれる人の名前くらいは何人か知っております。
例えば、長野潔氏、代田文誌氏、間中嘉雄氏・・・・

ところが灸家となると、思い当たる節がありません。
お灸専門の灸師などいるなんて思いもよらないことでした。
(資格上はあり得ますが)
まあ、鍼の付け足しみたいな・・・そんな程度の認識。

そんな程度の知識しかないところに、先日、リンズちゃんがお灸の本を貸してくれました。
マニアックな本ですから、普通の書店にはないはずのものです。
深谷伊三郎著「お灸で病気を治した話」

これ、鍼灸師以外は知らないでしょうね。
小生も全く知りませんでした。

読んでみるとこれが面白い。
最近、東洋医学系の本は「黄帝内経」以外は増永先生、たまに大塚敬節先生の本を読むくらいです。

他はつまらないという単純な理由です。
手技法家ですから、参考になることがあまりなくて・・・・

ところがこのお灸の本は参考になりましたね~。
お灸などする気もないのですが(法制上できないですし)、実に参考になります。

考えてみれば、黄帝内経よりもさらに古い文献が1970年代に中国で発見されていますが、これらの文献はお灸に関することです。
その歴史は非常に長いわけだ。

著者の深谷伊三郎氏という方、お灸一筋40年の段階でこの本を書いたようですが、珠玉の名言が散りばめられていて、感動ものでした。

東洋医学に興味がある手技法家は是非読むべき本ですね。
施術の仕方が変わるかもしれません。
(但し、読みこなすには基礎知識が必要でしょうけど)

「経穴は効くものじゃなくて効かすものだ」なんて名言を吐いてます。
ゾクゾクするじゃないですか。

しかし、日本もこういう無名(一般には)の優れた治療家を輩出しているんですね。
それぞれの道は深い。
リンズちゃんには是非、灸の大家になってもらって、お灸を据えてもらいたいものです。
なんだか、小生もスタッフKにインチキお灸をしたくなってきましたよ。

(二)

深谷伊三郎氏著「お灸で病気を治した話」
装丁はワードで文書を作って、プリントアウトした程度の、なんだか家庭でも作れるような安っぽいもの。

ところが装丁と内容は必ずしも一致しません。

このお灸の本、色々な発見があるのですが、増永師の論や、少し意味合いが違いますが、反射区機序にも繋がっていきます。

「経穴は効くものじゃなくて効かすもの」
そうなんです。
反射区も効くものじゃなくて効かすものなのですから共感しますね。

さらに「変動穴」という概念を提唱していますが、これも臨床上、しばしば経験するところですから全く共感します。

「変動穴」というと小難しい言葉に感じますが、要するに必要穴が移動する現象のこと。
もっと下世話な例でいうと、背中が痒くて掻いてもらうとするでしょ。

「もっと右、右、もう少し上、そう!そこそこ」なんて掻いてもらううちに、そこが治まると同時に今度は違うところが痒くなるなんてことがよくありますよね。ツボもまたこのように変動していくケースが多いわけです。

増永先生は手技の性質上、経穴に言及することがありませんでした。経絡を頼りに手指でもっとも効くツボを探り当てる技法ですね。

しかし、このお灸の先生はお灸という定点を決めなきゃいけないという性質上、経穴を頼りにします。しかし、頼りにするだけで決め付けるということはしません。そこから変動するツボを探り当てるという方法論を取るのです。

治療手段が違いますから、これくらいの違いはあってもいいでのですが、共通するのは盲目的にツボを決め付けないということです。

その人にとって必要なツボを見出す。
その手段が経絡的なのか、経穴的なのか、という違いだけです。

いずれにしても両者ともに相当な経験と手指の感性が必要だということは容易に想像できるわけで、何事も一朝一夕で成し遂げることは出来ません。

「本当のツボはここだ!」と主張する沢田流経穴に対しては、それは「変動穴」じゃないのか?!とちょっと皮肉っていたり、興味が尽きないないですねぇ。手技の立場でいえば、本当のツボなどありゃしない、ということは常識ですから。

ツボは個人によって変わってくるし、まさに移動し変動するものなのです。

(三)

手技においても、鍼においても、個人固有のツボを探り当てなきゃいけないのは当然のこととして、その手段によって経穴、経絡に与える影響力というのはかなり違うようです。

灸は基本的に熱エネルギー刺激です(艾の気というのもあるけれど)。

その熱が浸み透るまで行うとしているのですが、熱が浸み透るというのは一体どこで判断しているのでしょうか?

手技なら手指の感覚で圧が浸透した感じというのは何となく分かるのですが・・・・
一々患者に聞くというのも現実的じゃありません。
(熱が浸み透る感じそのものが分からないに違いないですしね)

一度、その熱が浸み透って響きが起きる現象というのを体感してみたいものです。
この本を紹介してくれたリンズちゃんは、鍼でも手技でも響かず、灸で初めて響き(遠隔操作)を体感できてちょっと感動したと言っていました。

また、熱が散じてしまって、上手く入っていかないという表現もあります。
見ただけで分かるのでしょうか。

いずれにしても的確な位置(ツボ)で的確な壮数(刺激量)を行えば、必ず、灸熱が浸透し、適応症である限り、効かぬことはないと断言しているわけです。
やっぱり名人、達人クラスじゃないとこのような境地には達しないでしょうね。

この深谷先生という方、非常にバランスが取れている考え方をします。
灸は他の療法では得られぬ妙効があるとしていますが、同時にその限界も熟知されていて、治療家の鑑みたいなものです。

経験からくる強烈な自負心と、適応症でないものは効かぬという謙虚な姿勢は一流の治療家の必要条件です。技量不足で効かないのか、そもそも適応症じゃないのかという判断は非常に難しいところです。

これを知るために経験を積むようなものですから。
治療家たる者かくあるべし、ですね。

(四)

面白い例を紹介しておりました。
日本の家屋には煙突というものがなかった為、眼病が多かったという話はいつぞやのブログで書いたような気がします。

その眼病の取穴法は口伝、秘伝に属するもので、秘することを条件に限られた弟子達が受け継いでいったわけです。

それでも、漏れ伝わっている部分もあり、この先生、それら先人の知恵を拝借して取穴し、治療を行っていたとのこと。

あるとき、眼病を患ったことのある中年の男性を診る機会があって、身体を調べたところ臂臑(ひじゅ-上腕にあるツボ)に明らかな灸の痕を発見し、膿でも出したのか?と聞きました。
(臂臑は排膿穴でもあります)

するとその男性、近所の婆さんが、ここにお灸をすれば眼病など治ると言って、灸を据えてくれたのだというわけ。

それを聞いた深谷先生、ピンとくるものがあったのでしょう、(それは良いことを聞いた)と今まで使っていたツボを捨て、眼病患者にはこの臂臑を中心に穴を求め、次々と試していったそうな。

すると、妙効、著効、卓効あらたかで、特に白内障には抜群の威力を発揮したそうです。
(正直に書いているところが面白い)

文脈から察するに、昭和40年代の話ですが、この頃日本ではまだ、年寄りが奥義ともいうべき灸点を知っていたという事実に驚かされます。

別に医者でも鍼灸師でもない普通の婆ちゃんがですよ。
(臂臑が眼病に効くなどとはどのツボの本にも載っていません。若し載っているとすればこの深谷先生の本に影響された著者でしょう)

東大医学部の眼科の教授でも治せない眼病を普通の婆ちゃんが治しちゃうわけですから、古典の妙というのは痛快です。

昔は生きていくための知恵の一つだったのでしょうね。
今はその知恵が失われてしまって、医療費だけが凄まじい勢いで伸びていっています。
なんだかなぁ、の昨今ですね。

(五)

近所の婆ちゃんに類する話は最近、小生も経験しました。
スタッフKが膝痛で大騒ぎしたことは前に書いたと思います。

当然、小生のインチキ鍼では効くはずもなく、その後も痛い、痛い、膝が曲がらない!とウルサイわけです。

仕方がありません。
本業の整体でもちょこっとやってやるか、と右側三関節と首をまあ適当に施療しました。
大分屈伸はできるようになったものの、依然、違和感があるようで、しばらく様子をみました。

しかし、どうも膝の腫れが引かないのです。
(こりゃ、最初にやったインチキ鍼で余計に悪くしたかなぁ)ということはおくびにも出さず、しょうがないので全身整体フルコースで行うことにしました。

すると、随分良いようです。
まあ、格段の違いと言っても良いでしょう。
しかし、それでも膝はちょっと腫れていて、水が溜まっているような感じです。
あと出来ることは継続することですから、また機会があればやってやろうと。
(施術としては成功なんですよ)

さて、ある日、整体の授業があって、スッタフKはモデルになっておりました。
ある部位にさしかかったところ、受講生の方が間違って教えたところと違う部位を施術しました。

臀部の緊張を取るに環跳穴近辺が一番良いのですが、その位置をかなり骨盤よりに取ったわけです。ここは正穴ではありません。奇穴、阿是穴の類でしょう。

むしろ、三関節のうちの股関節部位へ働きかける位置かもしれません。

ともあれ、そこを施療されたとき、スタッフKは膝に響いて非常に効くと言います。
たまたま左側だったので、後で、実際に悪くなってしまっている右側を同じ位置で押せと小生に命じるわけですよ。

小生に指示するなんて、10年早い!と思ったのですが、どうも真剣な様子。
右側を同じ位置で取穴押圧し、また押さえながら、運動法も加えました。

すると、響く!膝の中まで響く!と大音声を発したのち、なんと、膝の腫れが引きはじめまた。この間、わずか数分です。

当然、自覚症状も良好です。
驚いたのはホントに膝が一回り小さくなっていることでした。
これは古典の妙とも言えますし、三関節原理の応用とも言えます。

いやはや・・・・

おそらく近所の知恵婆ちゃん連中は、このようなどこの文献にも載っていない効く部位を知っていたに違いありません。

勿論、全ての膝痛に有効というわけではないのですが・・・・
しかしある種の膝痛に対してでも、これほど劇的かつ物理的に変化するケースは小生も初めてみました。

施術百話に軽症であるはずの膝痛を治せなかった例を書いておりますが、今、考えると、あの人はこの位置が効く人だったのかもしれません。

古典の成文はツボの方向性を示すのみ、としています。
あとは自分で考えろよ!という意味の裏返しなのですが、深谷先生の経験といい、今回の例といい、まさにツボは大まかな方向性を示しているのみです。

だからこそ、増永先生も経穴には言及されていないわけで、それに倣い、小生もほとんど経穴には言及したことがないわけです。

灸の話から段々ハズレていきますので、この辺で終わりまにします。
興味のある方は深谷先生の「お灸で病気を治した話」を読んでみてください。

小生は第4集と第5集を読んでいるだけですが、お灸を専門にするのじゃなければ、これで充分かと思います。
考え方がよく分かります。
そして参考になることでしょう。

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