« 神経ブロック | トップページ | モートン足 »

顔面麻痺の後遺症

 北海道は多分、顔面麻痺の発症率が全国平均より高いと思います。

 理由は冬、零下ん十度という酷寒の空気に顔を晒さねばならないという環境と、夏は夏で山に入ると、ダニに食われる確率が高いせいでしょう。
(ある種のダニは顔面麻痺を発症させるウイルスを保有している)

 選挙で風雨に晒される政治家も発症する人が多くて、有名なのは故田中角栄氏です。

 多少、後遺症は残ったようでしたが、顔面崩壊に至りませんでした。当時としては最先端の星状神経節ブロック治療を一日数回、一ヶ月あまり休みなく受療したせいだと言われています。
(それで「星状神経節ブロック療法」が一躍有名になりましたが、一般には知られていません)

 さて、私の友人も罹り、尚、その紹介の人も後遺症に悩んでいるとのことだったので、施術する機会がありました。

 一時は完全に左側に麻痺がかかり、顔面崩壊に陥ったらしい。
 病院での適切な処置と休息、そして鍼治療などで、なんとか元に近い形に戻ったものの、疲れてくると、左側の顔面の感覚が鈍くなり、形が崩れてくるとのこと。

 見ると、明らかに左右の違いが許容を超えていました。

 こういう人の場合、マッサージサロンへ行けば、顔面を中心としたマッサージをしてくれて、それなりに気持ちよくなるには違いありません。別に悪くはないのですが、改善効果は今一歩なので、手技がさほど重んじられていない理由でもありますね。

 そこで首から肩にかけてコリを診てみると、案の定、酷いコリの状態でした。
 多少の力じゃ効かん!くらいのコリようで、力自慢の業者なら、コリと格闘することになるるでしょう。モチロン、クライアントのコリと戦争をはじめても後々問題が出るのでそういうほぐし方はしません。しかし、コリをほぐすことから始めねば、どうしようもない症例であることも確かなので、時間をかけ、ほぐしていきました。

 特にこの方の場合、要チェックは、首の筋肉名でいうと胸鎖乳突筋、斜角筋。
 顔面筋だと咬筋、側頭筋、翼突筋群などです。

 肩回りは五十肩の既往歴があるとのことだったので、施術一式の中には含まれない棘下筋、肩甲下筋も重点としました。

 いずれにしても、どこにいてもやってもらったことがない部位なので、多少驚いていた様子。特に斜角筋はドンピシャだったらしく「こりゃ治るかも知れねぇ!にいさん、按摩ウメェな!」と生意気なことを言っておりました。
(気休めでやってんじゃないぞ、治すためにやってんだ!それに按摩じゃないし)といつになく不機嫌な私でしたが、本人が治りそうだと感じれば、実際、治癒に向かうことは確かなので、無礼な口の聞き方は許してやることにしました。
(冗談ですよ、別に腹は立ちません)

 術後、「10人くらいの人間が肩から降りていったようなくらい軽い!」と述べていましたが、(なるほどちょうど10人くらいの人間を食わせている小企業のオヤジなので、10人分が肩に乗っかっていたんだろうな・・・)と妙に納得した次第。

 明らかに顔の形も変り、「ヨシ!決めた!通うぞ!にいさん、通うからな!」と高らかに通院宣言をした後、定休日も営業時間も聞かず、トヨタークラウンにエンジンをかけ、颯爽と帰っていく姿に古き良き時代の典型的な中小企業のオヤジを見たのでございました。

« 神経ブロック | トップページ | モートン足 »

症例系の記事」カテゴリの記事