中背部痛
中背部というのは、通常、肩甲骨下端部から腰椎の湾曲が始まる手前くらいまでの間のことを言います。つまり、胸椎の7番くらい~12番くらいまででしょうか。
しかし解剖学的には中背部をどこからどこまでと定めているわけではありませんから、施術者によって、或いはクライアントによって多少の捉え方の違い、表現の違いは許容されるものと思います。
さて、男性でこの中背部痛を訴える方がいらっしゃいました。
胸椎でいえば9番か10番付近です。
現在、30代なのですが、すでに小学生の頃からそこに異和感を感じていたといいます。
それでピンときました。
それを確かめるべく、症状のない殿部筋群や太もものウラを押してみると、やたらピクピクと動き、痛がります。
成長痛の後遺症ですね。
男の子に多いのですが、ある時期急速に成長し、骨の成長に筋肉が追いつかないことがあります。極端な場合は痛みを訴えます。この場合、それだと分かるのですが、痛みまでには至らず、なんとも言えない異和感として残ってしまうこともあるわけです。
つまり、子供のうちに出来てしまうトリガーポイントであると言っても良いでしょう。
この特徴はまさに殿部にも太もものウラにもその名残が残っていて、押すと痛いというか、痛気持ち良いというか、そういう感覚を得るものなのです。
トリガーポイントですから、活性化したならばそれを沈静化すれば良いわけで、さほど難しい施術ではありません。
症状を抑えるだけならば・・・です。
しかし、考えてみても分かるように脊柱起立筋群と臀部筋群、そしてハムスト筋群に微妙な短縮があることは理の当然ですから、いつかの時点で、酷い腰痛持ちになるか、坐骨神経痛持ちになるか、或いはこのまま背中の痛みが持病になるかの瀬戸際に立たされているわけです。
ここにそれらのリスクを軽減すべく、施術を行う意義があるのです。
そこで、小生は、明らかな短縮が見られる起立筋群(腰部も含め)、殿部筋、ハムスト筋群に充分な時間を割いて緩めることにしました。
勿論、現実にある痛みの元となっているトリガーポイントへのアプローチも必要です。
(起立筋トリガーなのですが、正確には最長筋で、この筋肉トリガーは痛い部分より若干上部に問題があることが多いものです)
年季が入ってますから、中々緩まないのですが、焦らず、ジックリと経絡反応を起こすべく、施術を行いました。
活性度が強いので、一気に寛解ということはなかったのですが、手応えは感じました。
明らかに短縮されていた筋が緩んでいる様子も分かりました。
おそらく、各種の症状を将来持つリスクは軽減されたと思います。
勿論、このことはクライアントさんが分かるような事柄ではありません。
また、それを分からせようとクドクドと説明するのも小生の流儀ではないので、大仰しく説明することもありません。
(それをやるとなんか恩に着せるような感じで嫌なんだよね)
しかし、誰が知ることがなくても、この実感こそが仕事の原動力足りえるわけですから、常にベストを尽くすのです。これは施術者として当然のことであって、自慢にもなんにもならないことなのですが、そのような思いで懸命に施術に取り組んでいるという少数の施術者がいるということを知って頂きたく、あえて筆をとった次第です。