自律神経と首コリ
その人はもう30年以上、睡眠導入剤と安定剤を服用し続けています。
もともと、昼夜逆転の生活を長く送り、自律神経失調気味であったものが、40歳くらいを境に更年期と相まって益々酷くなり、ついに数ヶ月間の入院生活を送ったこともあります。
私も様々な人を診てきましたが、この人ほど眠剤と安定剤に依存している人は珍しいでしょうね。
たった一日でも、薬が切れてしまうと、不安感がこみ上げ、就寝どころではなくなります。
あるとき、風邪で体調を崩し、かかりつけの神経科に行くことができませんでした。
つまり、薬が切れてしまったのです。
さあ、そうなると、風邪の症状もさることながら、眠ることもできず、大変に辛い。
そこで、眠剤を服用している友人から、一日分だけ分けてもらいその薬を服用したそうなのです。
その眠剤を服用したあと、お風呂に入ったのですが、そこで意識を失いました。
(眠剤の種類が違ったらしい・・・なんと無謀な)
ご主人が帰ってくるのがもう少し遅れたら、お風呂の中で溺死していたかもしれません。
湯船で意識を失っている妻を見たご主人はさぞびっくりしたことでしょう。
起こすと、朦朧としながらもなんとか風呂から出て、布団で休んだらしいのですが、それから約3日間、寝たきりとなり、その間の記憶が全くないといいます。
少し落ち着いてから、ご主人から電話があり「・・・そんな事情なんだが、診てやってくれないか?」とのこと。
小生にもある施術のヒントが思い浮かびましたから、快く承諾した次第。
実際、診てみると、予想はドンピシャ。
そう表題にあるように、首コリです。
自律神経系の症状の方は首に酷いコリを持っていることが多いもの。
その人は度を越しており、左右にほんのわずかでも振ることができません。
カラーをあてたように全く首が動かないのです。
しかもあきらかに呂律が回っていないようです。
まあ、そんなことで、重点にすべき部位が分かりましたので、早速、施術。
当然ながら、首の硬いこと。
どうしたら、こんな硬いコリが生じるのだろう?と思うくらいです。
首が左右に回らない場合、普通は肩甲挙筋のセントラルトリガーが原因です。
ここに出来ている頑固なコリが首の回旋を困難にしているケースが非常に多いわけ。
当然、その部位についても入念な操作が必要ではあるでしょう。
しかし、その人の回旋困難症状は肩甲挙筋がメインであるわけではなく、ここに至っては頸筋全部の硬化と考えるべきです。
実際、手から伝わってくる感覚でも分かります。
手に触れる頸筋すべてを緩めるべく、かと言ってムキにもならず、静かに、優しく、深く・・いつもの通り緩め、トリガーに触れ、施術を進めていきました。
うつ伏せ、横向き、仰向け。
すべてのポジションで首を緩めていくのは明生館流の真骨頂です。
もちろん、首だけの施術では長持ちしませんから、全身的にもやりました。
小一時間ほどの施術のあと、回旋不能であった首が左右45度づつ、計90度まで回復しました。
すると、虚ろだった目に光が戻り、口調がはっきりしてきたのが誰の目にも分かるほどの改善を見せたわけです。
薬の常用がそのような首の状態を招いたのか、そのような首の状態だから、薬を服用し続けねばならない症状が出てきたものなのかまでは分かりません。
しかし、一つだけ言えるのは首の症状と自律神経症状や、場合によって神経内科領域や心療内科領域の病と密接にリンクしているということです。
ここに盲点があるということは再三に渡って述べているのですが、正式な医療では全く耳を貸そうとはしません。
今しばらく、我々が主体となって、このような症状の方のお力になるしかないようです。
しかし、神経内科や心療内科領域の一部まで整体適応である、とどのように知らせるかが問題ですね。
ネットなどで地道に情報を発信していくしかないでしょう。