« 2011年4月 | トップページ | 2011年6月 »

自律神経と首コリ

その人はもう30年以上、睡眠導入剤と安定剤を服用し続けています。
もともと、昼夜逆転の生活を長く送り、自律神経失調気味であったものが、40歳くらいを境に更年期と相まって益々酷くなり、ついに数ヶ月間の入院生活を送ったこともあります。

私も様々な人を診てきましたが、この人ほど眠剤と安定剤に依存している人は珍しいでしょうね。

たった一日でも、薬が切れてしまうと、不安感がこみ上げ、就寝どころではなくなります。
あるとき、風邪で体調を崩し、かかりつけの神経科に行くことができませんでした。

つまり、薬が切れてしまったのです。

さあ、そうなると、風邪の症状もさることながら、眠ることもできず、大変に辛い。
そこで、眠剤を服用している友人から、一日分だけ分けてもらいその薬を服用したそうなのです。

その眠剤を服用したあと、お風呂に入ったのですが、そこで意識を失いました。
(眠剤の種類が違ったらしい・・・なんと無謀な)

ご主人が帰ってくるのがもう少し遅れたら、お風呂の中で溺死していたかもしれません。

湯船で意識を失っている妻を見たご主人はさぞびっくりしたことでしょう。

起こすと、朦朧としながらもなんとか風呂から出て、布団で休んだらしいのですが、それから約3日間、寝たきりとなり、その間の記憶が全くないといいます。

少し落ち着いてから、ご主人から電話があり「・・・そんな事情なんだが、診てやってくれないか?」とのこと。

小生にもある施術のヒントが思い浮かびましたから、快く承諾した次第。

実際、診てみると、予想はドンピシャ。

そう表題にあるように、首コリです。

自律神経系の症状の方は首に酷いコリを持っていることが多いもの。

その人は度を越しており、左右にほんのわずかでも振ることができません。

カラーをあてたように全く首が動かないのです。

しかもあきらかに呂律が回っていないようです。

まあ、そんなことで、重点にすべき部位が分かりましたので、早速、施術。

当然ながら、首の硬いこと。

どうしたら、こんな硬いコリが生じるのだろう?と思うくらいです。

首が左右に回らない場合、普通は肩甲挙筋のセントラルトリガーが原因です。
ここに出来ている頑固なコリが首の回旋を困難にしているケースが非常に多いわけ。

当然、その部位についても入念な操作が必要ではあるでしょう。

しかし、その人の回旋困難症状は肩甲挙筋がメインであるわけではなく、ここに至っては頸筋全部の硬化と考えるべきです。

実際、手から伝わってくる感覚でも分かります。

手に触れる頸筋すべてを緩めるべく、かと言ってムキにもならず、静かに、優しく、深く・・いつもの通り緩め、トリガーに触れ、施術を進めていきました。

うつ伏せ、横向き、仰向け。
すべてのポジションで首を緩めていくのは明生館流の真骨頂です。

もちろん、首だけの施術では長持ちしませんから、全身的にもやりました。

小一時間ほどの施術のあと、回旋不能であった首が左右45度づつ、計90度まで回復しました。

すると、虚ろだった目に光が戻り、口調がはっきりしてきたのが誰の目にも分かるほどの改善を見せたわけです。

薬の常用がそのような首の状態を招いたのか、そのような首の状態だから、薬を服用し続けねばならない症状が出てきたものなのかまでは分かりません。

しかし、一つだけ言えるのは首の症状と自律神経症状や、場合によって神経内科領域や心療内科領域の病と密接にリンクしているということです。

ここに盲点があるということは再三に渡って述べているのですが、正式な医療では全く耳を貸そうとはしません。

今しばらく、我々が主体となって、このような症状の方のお力になるしかないようです。

しかし、神経内科や心療内科領域の一部まで整体適応である、とどのように知らせるかが問題ですね。

ネットなどで地道に情報を発信していくしかないでしょう。

HbA1c

HbA1c

そのままエイチビーエーワンシーか、ヘモグロビンエーワンシー呼ぶのが一般的なようです。

ご存知の方は、常識だ!くらいの勢いで承知しているでしょう。
糖尿病の指標になる血液検査項目の一つです。

逆に糖尿病と縁がない人は医療関係者でもない限り、聞いたことがないかもしれません。

よく聞く「血糖値」とはまた違う指標なのですよ。

詳しく知りたい方はネットでググれば小生などが説明するよりはるかに詳細かつ懇切丁寧に解説してあるサイトが多くありますので、ご参照ください。

通常この数値は4.3~5.8%が正常とされています。
糖尿病の方やその前段階にある人は確実にこの数値を超えています。

小生、実のことを言いますと「6.5」ありました。
リッパな糖尿予備軍ですね。

食事の改善によって様々な検査数値は改善したのですが、このHbA1cだけは中々改善しなかったんですねぇ。

HbA1cは過去2ヶ月くらいの平均が出てしまうので、すぐに改善するものではありません。
しかし、相当に節制していても半年以上に渡ってこの数値が全く改善しませんでした。

いやはや体質とはよく言ったもんだな、と。
そう思うほど努力が報われない検査数値でしたね。

結局、8ヶ月くらいでようやく「5.6」という正常範囲に収まってくれてホッとしたわけですが、話によると、小生は運が良いほうらしい。

何年にも及ぶ節制でもこの数値が一向に改善しないという一群の人々がいるらしいのです。

普通、高血糖状態はよろしくないので、薬の使用に踏み切ってしまうわけですが、そうなるともう一生服用を続けなければなりません。

インスリンがインスリンレセプターに働きかけて糖が細胞に吸収されていく・・・こういう話は聞いたことがあると思います。

このときに重要な事実は、インスリンは出ているということです。
インスリンが出ていないのであれば、これはⅠ型糖尿病といって、成人病のⅡ型とは区別すべきものですから。

インスリンは出ている・・・しかし、糖が処理されず残ってしまう。
細胞は糖が不足し元気がなくなるわ・・・血管は高血糖にさらされて傷んでくるわ・・・これが糖尿病ですよね。

実はインスリンとそのレセプターが結合するためには耐糖因子が必要と言われています。
GTFと略されるものですが、このGTFを構成する要素として重要なのが三価クロムという微量元素なんです。

この三価クロムはホントに微量で済むものなのですが、その分、吸収が悪いんですね。
だから、ある意味、乳幼児のときが勝負でございまして、母乳から摂取して積み立てて置くのです。そして、その在庫を消費していくということになるわけです。

じゃ、その在庫はどこにあるのか?

ちょっと意外なことに腎臓が主な貯蔵庫になっているのですよ。

足を揉みますと、血糖値が下がります。
この効果はかなりのものなのですが、すい臓が刺激されてインスリンの分泌量が増えたわけではないんですね。

むしろGTFが作られるように変化した、つまり、腎臓が活性化してGTFを作る材料の在庫が出てきた・・・と、こうなるわけです。

実際のところ、三価クロム不足が原因で糖尿病になっている人は驚くほど多いらしいのです。

じゃ、簡単な話じゃん!三価クロムを補給すれば良いのでは!ということになるわけですが、これがそう簡単ではありません。

微量元素というのは非常に吸収が悪い。
特にこの三価クロムはベラボーに悪い。

だから、考え方を変えなきゃいけません。

三価クロムという在庫が底をついてしまっているというよりも、残ってる在庫を利用できなくなっている、という具合にね。

腎臓を中心として、全身細胞の活性化が必要になるわけですね。

小生、ようやくこれに気がついて、遅ればせながら、足揉みのセルフケアーをしましたもの。

セルフケアーは大変ですが、自分の全身をセルフケアーするのは難しいでしょ。
足しかないじゃないですか。

これをやるようになって、実はHbA1cが下がったんですね。

三価クロムのサプリメントも良いのですが、前述のように中々吸収されませんから、気の長いスパンで服用していくべきでしょう。

その間、高いままなら大変ですから、足を揉んで在庫活用していくのがベストのような気がします。

以上、自分の体験からでした。

現在、小生は血糖降下剤や、糖を吸収しづらくする薬などの治療薬は一切服用しておりません。

それでも、このHbA1cは完全にコントロールされているのです。

名医と並医とヤブ

上工、十に九を
 中工、八を
  下工、六を全うす。

難経(なんぎょう)という鍼灸の古典に出てくる一節です。

意味は
名医は10人の患者のうち9人までを治すことができる。
並みの医者なら8人であり、ヤブ医者は6人である。

治癒率でいうと名医は90%。並医は80%、ヤブ医者なら60%ということになりますね。

深読みすると色んな意味が汲み取れて面白いものです。

まず名医の十に九・・は当然でしょうか。
どんな名医でも百%の治癒率なんてことはあり得ません。
患者のうちの10%くらいはいかに適切な治療をしても治し得ないでしょう。
これは常識として分かります。

次の一節(中工、八を
並みの医者に8割の改善率を与えていますね。

名医と治癒率では10%しか変わりません。
名医と並医の実力の差が、10%しか違わないなんてあり得ないにも関わらず。
名医とは天賦の才と文字通り並外れた努力によってようやく達成できるレベルであって、それが故に「名医」なわけです。

疑問に思いませんか?

実はこのこと自体が東洋医学の特長をよく表しているものなのです。

鍼術の方法論というのは経絡、或いは経穴を探り、いかにその人(患者)にとって適切なツボを選ぶことができるか、ということですよね。

名医は正確に正解のツボを選ぶことができるわけです。

並医は正確かつ適切なツボの選定という観点からいうと、おそらく名医の半分にも満たないでしょう。

それでも、8割の改善率になる・・・
このことで何を言いたいのか?ということを行間から読まねばなりません。

人の身体には自然治癒力というものが備わっています。
この場合は、外的刺激を治癒のキッカケ、もしくはパワーに転換する力のことです。
もともと身体に備わっている「能力」と呼んだほうが良いかもしれません。

ですから、ツボを半分しか当てられない並医でも、患者の身体のほうが勝手に治癒パワーに変換してくれて、治病に至るというわけです。

8割の患者を治せるであれば、多大な労力をかけて、ほとんど自分の全人生を捧げてまで研鑽して「名医」になり、わずか10%ほどの治癒率を向上させなくとも良いのではないか・・・という疑問が湧いてきませんか。

患者というのは統計的に処理された数値ではありません。
その人にとってはたった一つしかない、かけがえのない「命」を持った存在です。
その「命」を十人のうち一人でも余計に救える技量というのは「命」が何物にも代え難い貴重なものであれば、何物にも代え難い尊い行為になるのは当然のことですよね。

ですから、すべからく医者を目指す者は「名医」を目指すべきであって、結果として才なく名医足り得なくとも、その努力をした者に天は8割の改善を与えるように取り計らっているわけだと・・・このように解釈せねばなりません。

中工の意味の解釈になるのですが、順当に考えれば小生が文中に表現してきた「並の医者」という意味になります。しかし、相当な訓練をし、情熱を持っていなければ8割方の患者の治癒力を引っ張り出すことなど不可能でしょう。

名医を目指し、本当に一生懸命努力してきた・・・が・・才一歩及ばず・・・というのが中工の真の姿ではないかな、と思うわけです。
実力に相当の差があるにもかかわらず、治癒率が一割しか違わないのはまさに天の計らいだと思いますよ。

さて下工。
これをヤブ医者と訳しました。
ツボがほとんど当たらない医者。そもそも医者をやることが間違っている医者。
向いてない奴、というニュアンスになりますよね。

これにおいてさえ、十のうち六を全うする、わけですよ。
これこそ、先に述べてある刺激転換能力のお陰としか言いようがありません。

鍼術は素人がやると危険ですから、下工といえども、その扱いくらいは知っていなければなりません。
しかし、これを手技法(徒手療法)と考えればどうでしょうか?

6割はちょっとオーバーな表現かと思いますが、まあ半分近くは改善していくことでしょう。
つまり、さほど習熟していなくとも、それなりに実績は出せるということです。

手技は安全ですし、癒し効果もあるので、鍼ほど取り扱いに注意しなくても良いわけです。ですから、継続して勉強していく動機を持ちづらいんですね。

だからある意味、手技業界は下工だらけっていうか、下工の集まりみたいな・・集団下工だ・・

改善率が全体で半分もあれば、口の上手い人なら、充分にやっていけるわけですし。
また面白いことに、ホントに治す能力はないのに「上手な施術者」というのが存在し得るのが手技の世界なのですよ。

鍼や漢方は上手=治癒率になりますけど、手技は別の要素が含まりますから。
即ち、「癒し」です。

癒しという分野では手技に優るものはないでしょう。
しかし、治病においても本来、鍼灸や漢方薬に決して劣るものではありません。

癒し効果という持ち味を生かしつつ、真の実力を発揮させれば、手技は集団下工どころか、上工に匹敵する集まりになれるはずだと、ず~と思ってきました。

それにはやはり継続した勉強が必要ですから、三水会を開催し続けているわけです。

三水会は当然、上工を目指す集団です。
そこを目指しつつ、結果、中工に終わっても良いのです。
その努力をした者に天は八割を保証しているのですから。
下工だけにはならないでおきましょう。

※十のうち九、八、六という具体的数字は正確なガチ数値ではありません。
古典のシンボリックな表現の一つです。ましてや歪みが深く潜行している現代においてはこの数値より全体に下がることは言うまでもありません。

« 2011年4月 | トップページ | 2011年6月 »