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棘下筋と小腸経

棘下筋を意識するのは五十肩の時くらいですが、回旋筋腱板(ローテーターカフ群)の一つですから、仮に五十肩の症状が出ていなくとも、酷使されトリガー・ポイントが形成されやすい筋肉ではありますね。
(成人は大概あると思います)

この棘下筋と関係が一番深い経絡は小腸経です。
増永経絡図表をお持ちの方は一目瞭然かと思いますが。まさに肩甲骨の真上を走行しているわけです。

小腸経の働きは“心”を補佐して血流支配の一端を担っているのと同時に、精神的には強いショックやトラウマなどに反応しやすく、こころが弱っても小腸経の異常として現れてきます。

またこの小腸経は横首から顎関節かけて走行し、迷走神経や奥歯、また耳の問題として現れることもあります。

腰の部分では腰椎の一番、二番、または起立筋、腰方形筋とも密接に関連しており、これらが原因で殿部の痛みや仙骨部の痛みを起こすこともあります。

経絡に上下関係はありませんが、実務上、異常が現れやすい経絡はこの小腸経が大腸経の次くらいに多いのではないでしょうか。

漢方では瘀血の証でよく出る異常です。

さて、五十肩の場合、この棘下筋を外して治療は考えられないのですが、それはとりもなおさず、五十肩という病態が、小腸経の強い関与を示唆しているわけで、その根底には血流の問題や心(こころ)の問題、臓器としての心臓の問題もまたそこに関与していると言えないこともありません。

個人個人によってその症状として出る部位が違うわけですが、五十肩、耳鳴り、顎関節症、腰痛、殿部痛、仙骨痛などの共通項として小腸経がキーワードとなることが多いということを理解しておいたほうが良いでしょう。

外側翼突筋との関連も深いことから、線維筋痛症という病態にも深く関与している可能性もあります。

この病気の発症は強い精神的なショックから起きる場合が多いことからも、この説の正しさを裏付けているのはないでしょうか。

一見無関係な病態でも経絡という一つの見方をそこに入れると、鮮やかにその関連性が浮かび上がってくるわけですね。

そうすると、トリガー・ポイントだけのアプローチではなく、全身的な協力が必要だということが分かってくるわけです。

つまり施術とは、そこに現れた症状からその人自体の歴史や傾向性を知るということにも繋がるわけで、ただ施術すれば良いというものでもないわけです。

筋肉派と経絡派はまるで敵対するかのような傾向がありますが、決してそうではなくて、筋肉のTPからも経絡異常を知ることができますし、経絡異常からも筋肉TPの見当をつけることもできるのです。

部位をピンポイントで特定するにはTP体系が役に立ちますし、そもそもその本質はどこにあったのか・・・これを知るには経絡説が非常に役立つわけです。

クライアントさんに言わないケースもたくさんありますが、その症状からその人の人生においてどのような問題があったか、というのが分かります。

具体的な出来事はもちろん分かりませんけれども、傾向性ですよね。どのように過ごしてきたか・・というライフスタイルやどのような思いをもって生きてきたか、という、まさに”傾向性”です。

整体師は占い師ではありませんから、そこら辺を突っ込んで話していくのはその人の感情生活に巻き込まれる可能性もあるわけで、それは避けねばなりません。

しかし、機械ではなく人間を相手にする以上、そこに“理解”もしくは“共感”という作業がないと真の癒しにはならないということも確かです。

直接口には出さなくとも、その共感の中で施術をしてあげることが重要ではないでしょうか。

それには別に超能力も霊能力も要りません。
多少の筋肉的、経絡的知識と深い思いやりだけです。

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