ヴァンパイアのほくそ笑み

ムゥフォフォフォ・・・・
狼男、下賎なヤツらめ。
太古、ワシらが、使役するためにこしらえた狼男。
最初は従順じゃった。忠実な下僕でな。力仕事でもなんでも文句を言わず、素直に従う便利な動物じゃ。ワシらが昼間動けないときには、忠実に番兵役を果たしておってのぉ~。
ところが、ヤツらめ、どこで知恵をつけたかもんだか・・反抗するようになってしもうた。
じゃが、もうヤツらの好きなようにさせんぞ。
人間め、中々やりおるわい。消臭スプレーに銀イオンを入れるとはのぉ。
お陰でヤツらの撃退方法が、『お手軽、簡単、便利で携帯可』というグッツで見つかったわい。マツモトキヨシで買い占めたのはワシらじゃ。
ん?ワシか?ワシはな、数万年をけみした一族の長老じゃ。人間どもから幾つ名を奉られたか覚えておらんほどでな。一番近い年代では・・・なんじゃったかな?
おお、思い出した。ドラキュラ伯爵と呼ばれておったわ。一族の者からは長老で通っておるゆえ、長老でよかろう。
お前ら人間とは長い付き合いじゃ。北インドで聡明な若者の修行を邪魔したのもワシなら、中東でナザレの若者を誘惑したのもワシじゃ。珍しく撥ねつけおったがの。じゃが、後継者をそそのかすのは簡単じゃったぞ。見てみぃ、いくつも分派しとるわい。
ムフォフォ・・じゃがのぉ、感謝してもらわねばならんこともあるぞい。2万8千年前、ネアンデルタール人の最後の生き残りをお前らに協力して滅ぼしてやったではないか。もう、覚えている者もおらんがの。記念碑にピラミッドを作ってやったが、いつのまにか、クフ王が4500年前に建てたことに改ざんされとるわ。あんなもの人間が作れるわけがなかろう。
そうよ、ピラミッドは2万8千年前、狼男どもを使役して作ったものじゃ。
よく覚えておくことじゃ。ワシらのお陰で今の人間、つまりホモ・サピエンス・サピエンスが栄えたんじゃからの。そうでなくば、今頃、ホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシスの天下じゃったわい。じゃから、時々、お前ら人間の生き血をすする権利があるんじゃ。今風に言えば戦略的互恵関係、そういう契約をお前ら先祖と交わしたんじゃよ。ま、お前らの中には悪魔に魂を売ったと、いきまいていた奴もおったがの。リンゴを食った!と比喩形で記録を残した奴もおったわ。
今更どうでも良いわ。お前ら人間は寿命が短すぎるでの。勝手に約束を果たさせてもらうわい。
小賢しくなった狼男を消臭スプレーで一掃した後は、ワシらの天下じゃ。
知恵のついた狼男の代わりにまた何か別の動物を使って使役用に仕立てるのはわけないことじゃ。昔から遺伝子工学はワシらの得意分野じゃて。犬系は懲りたでの。狼男ならぬ猫女でもこしらえるか。実は一体試作しておっての。今、埼玉におるわ。銀アレルギーなんかじゃないぞい。じゃから四谷の「銀ねこ」あたりに出没しとるらしい。
ムォフォフォフォ・・・

※今回は所謂、楽屋オチっていうやつ。仲間ウチでしかわからない落とし方ね。芸人がこれを使うと酷く軽蔑されるらしい。亜美之介もいつもオチのアイデアなんかないよ~。苦し紛れの落とし方さね。でも、埼玉の猫女っていきなり出てきたから、当人はビックリしたでしょうね。え?何?これって私のこと?目に浮かぶ。ムォフォフォフォ。
「銀ねこ」はこのときのために小説米田吾朗で伏線を張っていたのです。用意周到でしょ。

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狼男は銀アレルギー

オレ様は狼男。
天下無敵、不死身の狼男だぜ。
昔、バカな作家がいて、オレ達、狼男族をヴァンパイアの下僕のように書いていたな。
まあ、現実を知らん、上っ面の知識しかないヤツなんか相手にできねぇが、誤解されちゃかなわん、教えておいてやろう。
考えてもみろ。ヴァンパイアなど弱点だらけだ。にんにくアレルギーに十字架アレルギー、聖水アレルギーに日光アレルギーときたもんだ。まっ、アレルギーの四重奏だな。まだあるぜ、「流れ水を渡れない」なんて単なるカナヅチだろうがよ。豆をぶちまけりゃ、拾わずにゃいられない「強迫神経症」でもあるしな。
なんでそんな弱っちぃヤツの下僕なんだ?え?
そこいくと、オレ達、狼男は弱点がねぇじゃねぇか。満月になりゃ、100メートル3秒で走れるし、加速がつきゃ「望」と名古屋までノンストップでタイマン張れるぜ(新大阪まではちょっと厳しいけどよ、息切れすんだ、これは内緒にしておいてくれ)
助走なしの垂直飛びでも20メートルはかてぇしな。助走つけりゃ、ヒルズのテッペンまで登ってみせてやらぁ。マグナム弾が眉間ぶち抜いても、あっというまに再生さね。まあ、オレ様を止めることは誰にもできねぇ。
この間、西麻布でヴァンパイアの生き残りに偶然出くわしたがよ、ヤツめ相当ビビッてたな。ヴァンパイアをイジメルのは楽しいぜ。
ハウスおろしにんにくをちょこっとすりこんでやったら、悲鳴あげて泣いてたぜ。ハウスは効くな。今度会ったらSBで試してみるか。
あんな弱虫にオレ様の獲物の血を吸われてたまるかよ。絶滅種に指定して旭山動物園で大事にツガイで飼っとけっていうの。カラスの血でも飲ませてな。
ガハハ、狼男は史上最強にして最凶だ!
何?銀製の弾丸をくらったら死ぬんじゃないかって?
ばーか、銀の弾丸用意して鉄砲持ってるヤツが日本でいるかよ。
せいぜいヤクザが密輸銃隠してるくらいじゃねぇか。一般人が銃さえ持てねぇ国で銀の弾丸をなんで用意できんだ?理屈ではあり得ても、現実にはあり得ねぇな。だから、日本にやってきたんだ。それ以来、喰いっぱぐれたこたぁねぇ。
まあ、オレ様が銀アレルギーだってこたぁ認めるがよ。だがよ、ヴァンパイアみたいに柔なアレルギー体質じゃねぇぞ。銀貨ぶつけられてたって屁でもねぇ。銀製のフォークでもスプーンでもぶつけてみな。そんなもん、どうってこたぁねぇんだよ。素肌に触れれば、ちょっとした湿疹くらいはできるかもしれんがな。オレ様を仕留めるには身体の中に銀を入れこまねぇとな。まあ、考えるだけ無駄だ。そんなことできっこねぇ。

というわけで、今日の狩場は麻布さね。最近ここを餌場にするのが多いのさ。若い美味そうな一人暮らしのねえちゃんがたくさんいるからな。
六階のベランダまで一飛び。ベランダの鍵を開けるなんてわけねぇ。
おお、25、6の別嬪じゃん。いいねぇ、その恐怖に引き攣った顔。しかし、オレの満月の容貌を見て、失神しないなんて、中々、根性あるじゃんか。失神してる女喰らっても面白味がねぇからな。ハハハ、腰がぬけてら、まあ、これはしょうがないな。
おおよしよし、這ってどこ行くんだい?もう逃げ場はないよ。
いいね、いいね。久しぶりにいいねぇ。こうやって楽しむのは前菜みたいなもんだな。
まあ、すぐには喰わないから、安心しな。どこへ行くのかな?こんな狭い部屋で。
あらら、トイレに入るのか、トイレは安全だってか?そんなドア、オレ様にとっては紙みたいなもんだぜ。おっ、中から鍵かけたな。籠城ってわけか。いいよ、いいよ。気の済むまでやってみな。その間、恐怖に震えているんだな。くぅ~、たまらんね。
つくづく狼男でよかったと思える瞬間だな。これほどの快楽、地獄に落ちてもやめられねぇ。グフフ、ふぇふぇ、ジュルジュル、ヨダレが止まらん。ああ、もうダメだ。もう少し楽しみたいが、早く喰いたい。どこから喰おうか、首からか、腕からか、脚からか。ハラワタは一番美味いから最後にとっておくのがオレ様の流儀。まあ、せっかく失神しない女に巡りあえたんだから、生きたままハラワタ喰らってやろう。ていうことは首じゃダメだな、すぐ死んじまう。脚ならいいか、その生白い太ももをがぶりとな。
お、なんだ?鍵開けたな。もう観念か、自分から開けるなよな、楽しみが減るじゃねぇかよ。なんだよ、そんなスプレー缶持って。何?トイレ消臭スプレーだぁ?
バファファのファ、ああおかしい。人間ちゅうのは追い詰められると何すんだかわかんねぇな。消臭スプレーで何すんだよ。シュウって、お前、オレ様に消臭スプレーかけてどうすんだよ。極めつけのバカだな、オレ様の獣臭さを取ろうってのか。ヘソで茶沸かすぜ。
ん??ん!?・・なんだ・・?!ちょっと息苦しいぞ・・またシュウって顔にまともにかけたな。そんなもの平気だっ・・て、お、おかしい・・い、い、いきがで・き・ねぇ・・・・
な、なんなんだよ、そのスプレー・・・「銀の力で瞬間消臭」「銀イオン配合」だぁ?
じょ、じょうだんじゃ・・ねぇ・・モロ肺に入ったじゃねぇか・・・
グ、ググェエ~、タ、タスケ・・テ・・ク・・・・・・・・・ェ

※トイレの瞬間消臭スプレーに出合ったのはかれこれ6~7年前のことだったでしょうか。結構な威力がありましてね。随分、便利なものができたなぁ~と思ったものでした。
数年前、銀イオン配合の新製品が出たので試してみたら、従来品の数倍の威力があるではないですか。おお、これは凄い!と感じ入った次第です。と同時にこの小説のオチを思いついたんです。しかし、軽いオチなので、長編にも中篇にも短編にさえ向きません。そこで、一人称のショートショートの物語を構想しました。それが本編なんですが、しかし、あまりにもくだらない。これはWEB上のライトノベル以下だな、と思いつつも少々ネタが尽きましたので、思い切って発表しました。
小林製薬さん、ティーアンドワイさん、CMで使うなら売ってもいいですよ。
こんなCM作るわけないか。

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