症例系の記事

首の痛み

前回も首の話題でした。
不思議なもので、来院するクライアントさんの問題箇所が立て続けに同じということがあります。

一種のシンクロですね。

昔の話ですが、最高5人連続で膝痛のクライアントさんだったということがあったくらいでして。
さすがに5人連続というのはそれ以来ないですが、今でも2人連続、3人連続はザラにあります。

全く接点のないはずのクライアント達なのですから、もうこれはシンクロとしか呼べない現象です。

それはさておき、
首の症状も続いております。今回は痛みを取り上げてみましょう。

60代女性。
首から肩にかけて異様にコル感じすると・・・
さらにコリ感というよりも、痛みに変わるほど悪化していくそうな。

ふむふむ、なるほど、なるほど・・・

愁訴を聞いただけで、肩甲挙筋のセントラルTP症候群だと分かります。

前回の人のように首の回旋不能というのも、肩甲挙筋が大きく関係しておりますが、このように痛みを出すということもあるわけです。

ムチ打ちなんぞは典型でしょうね。

たまたま前回の三水会で肩甲挙筋の処理の仕方などを復習したわけですが、特にセントラルTPの処理の仕方をマスターすると守備範囲が飛躍的に広くなるわけでして、重要な操作の一つだと思います。

さて、このクライアントさんは定期的にこの症状が出てしまうということでした。
姿勢を診てみると、酷く猫背なんですね。

猫背の場合は大胸筋、小胸筋の短縮が間違いなくありますから、その処理をしないと施術効果が長持ちしません。

つまり、首まわりの処理とともに、肩~肩甲骨まわりは当然として、前側の処理に時間をかけなければならないのです。

ゆっくり、静かに、深~く、大胸筋、小胸筋に圧を送り、自然に緩むようにしてあげました。まあ、気持ち良さそうなこと。

鎖骨の下あたりから乳腺が始まるぎりぎりのところまでやらねばなりませんので、クライアントさんが女性ですと、非常に気を使います。

しかし安心感のある施術で上手にやれば、凝っているわけですから、適応症の方はとても気持ちが良いわけです。

愁訴についての施術を一式やったところで、眠ってしまったようです。
起こすのが偲びないのですが、仕方がありません。

起きて頂き、首を回してみれば、痛みは完全消失。

それほど重症ではありませんので、一回でOKです。

三ヶ月くらいは持つでしょうね。

このように明らかにTP症候群であったとしても、歪みの連鎖の中で考えていかねばならないことも多いわけです。

トリガー処理だけをする西洋的な発想ではなく、歪みの連鎖、つまり経絡的な発想というものも施術には欠かすことができません。

絶対的に正しい筋肉連鎖モデルというのは実はないんですけどね。

姿勢とか硬さとかを診て、自分がこうだと思った方向で良いわけです。

あとはTPが大きくハズレていなければ、大概の問題は解決するのです。
(ある程度の回数が必要な人もいるけれども)

久しぶりの五十肩

久しぶりに五十肩のクライアントさんが来院されました。

腕を挙げようとすると痛いと訴えておりました。

痛みで寝られないとか、じっとしていても痛みがある、というわけではないので重症ではありません。

しかし、不用意に挙げてしまうと激痛が走るため、不便だと言います。

腕を挙げなければ、痛みがないので、つい忘れて挙げるのですが、実はこのこと自体が悪化させる原因となります。

最初はこんなところから始まり、下手すると痛みのため目が覚めてしまう・・・さらに悪化すると、もはや寝ることさえ容易ではなくなり、さらに悪化すると、目覚めてジッとしていても脂汗が出るほど痛む・・・ということになりかねません。

小生が嫌というほど経験しましたからね。

ここに至るとホントに辛い・・・しかも鎮痛剤がほとんど効かないのです。

逃れようのない!誤魔化しようのない!痛みで瞬間瞬間苦しめられるのですから、それがどれほどのものであるか想像して頂くしかのないのですが、幸いにして、今回のクライアントさんはそこまで悪化してはいません。

一度そうなってからのほうが施術の有難味が分かると思いますし、健康の有難さも身に染みると思うのですが、まあ、施術のタイミングもご縁でございますから、全力を尽くすことはいうまでもありません。

五十肩の施術はすでにパターン化されていますので、一度覚え込むと難しいものではありません

昔、五十肩のクライアントさんが不得意で不得意で、出来れば来てほしくないと思っていたのがウソみたいにストレスのない施術ができます。

ローテーターカフ群、日本語では回旋筋腱板という四つの筋肉が原因であることが多いわけですが、時には首の斜角筋が主因の場合もあります。

ま、いずれにしても施術のパターン化が容易なので、手薬煉(てぐすね)を引いて待っているという症例になります。

今回で2回目だったのですが、一回目が終わった直後、さほど変化がないらしく(これは非常に珍しいことです)、『ブロック注射が効くと友人から聞いたんですが、それをやってもらって方がいいでしょうか?』などとのたまうわけです。

ブログに書いてしまいますと、証拠が残りますから、どう答えたかは書きません。

2回目、案の定、翌日以降沈静化されて、挙げるときの痛みが少し残る程度にまで回復しておりました。

放っておけば絶対に悪化するタイプの症例でしたから、これでも施術の目的は達したことになると思いますよ。

面白いのはこういう経過の人もいますし、施術直後、相当に楽になって、翌日以降に痛みが激しくなるというタイプの人もいるわけで、事前にこの区別が中々つかないんです。

施術自体は何度も言いますが、難しくありません。しかしこのようなことがあるため、カウンセリングがちょっと面倒くさいんですよね。

いずれにしても、どの流儀でも難儀する五十肩への方法論が確立されているということは施術家として実に幸運なことと申せましょう。

ネットでググってみても五十肩ほど的外れな施術法を一様に採っている症例は珍しいと思います。(かつては小生もあまり他流儀のことを言えた義理ではありませんでしたけど)

ということは不要な痛みを不必要な期間、執拗に感じ続けねばならないということですから、日本国全体でみると一年間の経済換算損失は相当なものでしょう。

自分達ができることで国にも貢献しているわけです。

中背部痛

中背部というのは、通常、肩甲骨下端部から腰椎の湾曲が始まる手前くらいまでの間のことを言います。つまり、胸椎の7番くらい~12番くらいまででしょうか。

しかし解剖学的には中背部をどこからどこまでと定めているわけではありませんから、施術者によって、或いはクライアントによって多少の捉え方の違い、表現の違いは許容されるものと思います。

さて、男性でこの中背部痛を訴える方がいらっしゃいました。
胸椎でいえば9番か10番付近です。
現在、30代なのですが、すでに小学生の頃からそこに異和感を感じていたといいます。
それでピンときました。

それを確かめるべく、症状のない殿部筋群や太もものウラを押してみると、やたらピクピクと動き、痛がります。

成長痛の後遺症ですね

男の子に多いのですが、ある時期急速に成長し、骨の成長に筋肉が追いつかないことがあります。極端な場合は痛みを訴えます。この場合、それだと分かるのですが、痛みまでには至らず、なんとも言えない異和感として残ってしまうこともあるわけです。

つまり、子供のうちに出来てしまうトリガーポイントであると言っても良いでしょう。

この特徴はまさに殿部にも太もものウラにもその名残が残っていて、押すと痛いというか、痛気持ち良いというか、そういう感覚を得るものなのです。

トリガーポイントですから、活性化したならばそれを沈静化すれば良いわけで、さほど難しい施術ではありません。

症状を抑えるだけならば・・・です。

しかし、考えてみても分かるように脊柱起立筋群と臀部筋群、そしてハムスト筋群に微妙な短縮があることは理の当然ですから、いつかの時点で、酷い腰痛持ちになるか、坐骨神経痛持ちになるか、或いはこのまま背中の痛みが持病になるかの瀬戸際に立たされているわけです。

ここにそれらのリスクを軽減すべく、施術を行う意義があるのです。

そこで、小生は、明らかな短縮が見られる起立筋群(腰部も含め)、殿部筋、ハムスト筋群に充分な時間を割いて緩めることにしました。

勿論、現実にある痛みの元となっているトリガーポイントへのアプローチも必要です。
(起立筋トリガーなのですが、正確には最長筋で、この筋肉トリガーは痛い部分より若干上部に問題があることが多いものです

年季が入ってますから、中々緩まないのですが、焦らず、ジックリと経絡反応を起こすべく、施術を行いました。

活性度が強いので、一気に寛解ということはなかったのですが、手応えは感じました。

明らかに短縮されていた筋が緩んでいる様子も分かりました。

おそらく、各種の症状を将来持つリスクは軽減されたと思います。

勿論、このことはクライアントさんが分かるような事柄ではありません。
また、それを分からせようとクドクドと説明するのも小生の流儀ではないので、大仰しく説明することもありません。
(それをやるとなんか恩に着せるような感じで嫌なんだよね)

しかし、誰が知ることがなくても、この実感こそが仕事の原動力足りえるわけですから、常にベストを尽くすのです。これは施術者として当然のことであって、自慢にもなんにもならないことなのですが、そのような思いで懸命に施術に取り組んでいるという少数の施術者がいるということを知って頂きたく、あえて筆をとった次第です。

深部脊柱筋(しんぶせきちゅうきん)

 脊柱筋と言えば、脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)が有名ですが、痛みの治療で盲点になるのは、脊柱起立筋よりもむしろ深部脊柱筋の方です。

 深部脊柱筋という名称は総称で、具体的には回旋筋、多裂筋、半棘筋、肋骨挙筋などのの筋肉のことですが、いずれも触診で確認することはできないため、深部脊柱筋で一括します。また徒手療法ではそれでも不都合はありません。

 この深部脊柱筋にトリガーが出来ると、関連痛を他所には送らず、トリガーが出来たその場所が痛むという特徴があります。しかも、その痛み方は脊椎そのもの、つまり骨の痛みとして感じるのです。

 これはヘルニアなどで感じる深部痛と全く区別できないため、たまたまレントゲンにヘルニアが映し出されると、これだ!と鬼の首を取ったように原因を特定されます。そして、不要な手術まで受けるハメになった例は数知れず・・・
 なんのことはない、筋筋膜が痛みの根源であったという笑えない話。

 しかし、この深部脊柱筋の処理は思うほど簡単ではありません。
 うつ伏せで行う押圧であれば、この筋肉に届くものの、骨まで前方に押し出すことになてしまいます。これが腰椎ですと、骨の変位が増悪し、症状をかえって悪化させること度々。
 これについては増永師が再三に渡って、著作の中で警告しているにもかかわらず、未だ一部業者の間で普通に行われているのは、全く解せない話なのですが、手技法界全体にかかわらる信用の問題のため傍観できる限度を超える寸前でしょうね。

 故に押圧はよろしくない!という極端な理論が出てくるわけでして、確かにうつ伏せで腰を押すくらいでしたら、揺らしたほうが余程良い効果を得られます。少なくとも増悪させません。

 しかし私は、この深部脊柱筋のトリガーを沈静化するには押圧がもっとも効果的であると経験的に知っていたため、骨の変位を招くデメリットを最小限に食い止め、トリガーを消し去る方法論を模索してきたわけです。
 五年ほど前くらいから、横向きでの脊柱押圧は椎骨の変位を招かず、筋筋膜のトリガーのみに影響を与えることを実感して、それを実行しておりました。しかし、この方法はかなり難しい。不安定さを微塵も感じさせず、深部脊柱筋に届き、それでいて、腰椎の変位を招かない方法になるのですから当然です。絶妙のバランス感覚が必要かもしれません。

 しかし、ひとたび、このコツを覚えれば、原発性の深部脊柱筋由来の腰痛には圧倒的な強みを得ることになります。

 実は腰痛の問題は、深部脊柱筋の問題でなければ臀部筋か、腹部の問題か、あるいは腸腰筋の問題に過ぎません。本当にヘルニア等、徒手療法の手に負えないケースは全体の10%くらいでしかないのです。
(そっくり経絡に置き換えて説明することも可能なのですが、煩雑になるため、筋系で通します)

 このことに気づいて、技術を練磨してきた施術家はそれなりのリスペクトを受けて活躍しているのはご承知の通りですが、単なるほぐし整体との違いは知識のみであって、技術的な違いはわずかでしかありません。

 開業する人は当然、技術に自信があっての開業でしょうが、技術というのはそれを使うべきフィールドを理解するという知識によって生かされるわけで、ほぐすのが上手いというだけなら、それ自体の価値はかなり限定的であると申せましょう。施術というのはどこをどの程度どこまでやれば、こうなる!という仮説の下に行われるわけでして、その仮説力は知識力の別名であって、経験もまた経験則という知識に他なりません。

 話が逸れていきました。元に戻しましょう。

 深部脊柱筋由来の腰痛や背中の痛みは驚くほど多く、そしてその有効な対応技法は驚くほど少ないのが現状です。それは一重に深部脊柱筋への認識不足が招いている事態なのです。

 ひと度、深部脊柱筋という概念と、そこに問題の所在があるかもしれないという予測が立てられたなら、方法論はいくらでも思いつくはずですから、技術というのは、やはり思想から派生し、作られるものだということが再認識されます。

 手術が必要なほど骨が変位し、これ以上ないというくらいのヘルニアがレントゲンで確認できるのに、当の本人は痛くも痒くもなく、平気でテニスをやっている・・・他方、レントゲン等では全く異常がなく、これで痛みが出るのはおかしいという程の人が車椅子が必要なほどの腰痛持ちであったりする・・・この事実を前にして、腰痛とは骨の変位が原因ではなく、怒りという精神的な感情の現れであると、断定した整形外科医がいました。

 あまりにも有名な「腰痛は怒り」説です。医学的には相手にされていませんが、今も信奉者が数多い説ではあります。

 実際あり得ると思いますし、そのような症例に出くわしたこともありますが、深部脊柱筋トリガーの概念を導入したほうがはるかに当てはまる例が多く、説明がつきやすいものです。

 しかし西洋医学の世界では、この説は「怒り」説と同じくらい受け入れ難いものですから、認知されることはまずないでしょう。
 しばし、整体師の独壇場になるわけですが、これを喜んでいいものなのか、悲しむべきことなのか・・・複雑な心境ではありますね。

 激しいスポーツをかなり熱心にされていた方などがこの深部脊柱筋由来の痛みに苛まれるケースが多いものです。
 一つ一つの筋肉が小さいため、急激な身体の使い方(捻りの動作など)で傷めやすいからなのですが、転倒や事故の後遺症でも痛めます。

 スキーの元選手が原因不明の背骨痛(首も背中も腰も)に悩んでおりました。どこに行っても良くならないと嘆いていたのですが、この方、典型的な深部脊柱筋由来の症状でしたので、それに気がつかない施術院では治らないだろうなぁ、と思ったものです。
スキーで激しく転倒したことが何度もあるとのことで、深部脊柱筋に障害が出てもおかしくありません。(スキーでの転倒は後遺症が残りやすい)

 痛みのためにQOLが著しく損なわれるわけですから、こういう人々こそ楽にしてあげるのが使命です。

 いずれにせよ、肉体的苦痛に悩んでいる人を一人でも多く救うためにこの業界に入ったわけですから、深部脊柱筋トリガーの概念と処理技法を自家籠薬のものとするに如くはないでしょう。

顔面麻痺の後遺症

 北海道は多分、顔面麻痺の発症率が全国平均より高いと思います。

 理由は冬、零下ん十度という酷寒の空気に顔を晒さねばならないという環境と、夏は夏で山に入ると、ダニに食われる確率が高いせいでしょう。
(ある種のダニは顔面麻痺を発症させるウイルスを保有している)

 選挙で風雨に晒される政治家も発症する人が多くて、有名なのは故田中角栄氏です。

 多少、後遺症は残ったようでしたが、顔面崩壊に至りませんでした。当時としては最先端の星状神経節ブロック治療を一日数回、一ヶ月あまり休みなく受療したせいだと言われています。
(それで「星状神経節ブロック療法」が一躍有名になりましたが、一般には知られていません)

 さて、私の友人も罹り、尚、その紹介の人も後遺症に悩んでいるとのことだったので、施術する機会がありました。

 一時は完全に左側に麻痺がかかり、顔面崩壊に陥ったらしい。
 病院での適切な処置と休息、そして鍼治療などで、なんとか元に近い形に戻ったものの、疲れてくると、左側の顔面の感覚が鈍くなり、形が崩れてくるとのこと。

 見ると、明らかに左右の違いが許容を超えていました。

 こういう人の場合、マッサージサロンへ行けば、顔面を中心としたマッサージをしてくれて、それなりに気持ちよくなるには違いありません。別に悪くはないのですが、改善効果は今一歩なので、手技がさほど重んじられていない理由でもありますね。

 そこで首から肩にかけてコリを診てみると、案の定、酷いコリの状態でした。
 多少の力じゃ効かん!くらいのコリようで、力自慢の業者なら、コリと格闘することになるるでしょう。モチロン、クライアントのコリと戦争をはじめても後々問題が出るのでそういうほぐし方はしません。しかし、コリをほぐすことから始めねば、どうしようもない症例であることも確かなので、時間をかけ、ほぐしていきました。

 特にこの方の場合、要チェックは、首の筋肉名でいうと胸鎖乳突筋、斜角筋。
 顔面筋だと咬筋、側頭筋、翼突筋群などです。

 肩回りは五十肩の既往歴があるとのことだったので、施術一式の中には含まれない棘下筋、肩甲下筋も重点としました。

 いずれにしても、どこにいてもやってもらったことがない部位なので、多少驚いていた様子。特に斜角筋はドンピシャだったらしく「こりゃ治るかも知れねぇ!にいさん、按摩ウメェな!」と生意気なことを言っておりました。
(気休めでやってんじゃないぞ、治すためにやってんだ!それに按摩じゃないし)といつになく不機嫌な私でしたが、本人が治りそうだと感じれば、実際、治癒に向かうことは確かなので、無礼な口の聞き方は許してやることにしました。
(冗談ですよ、別に腹は立ちません)

 術後、「10人くらいの人間が肩から降りていったようなくらい軽い!」と述べていましたが、(なるほどちょうど10人くらいの人間を食わせている小企業のオヤジなので、10人分が肩に乗っかっていたんだろうな・・・)と妙に納得した次第。

 明らかに顔の形も変り、「ヨシ!決めた!通うぞ!にいさん、通うからな!」と高らかに通院宣言をした後、定休日も営業時間も聞かず、トヨタークラウンにエンジンをかけ、颯爽と帰っていく姿に古き良き時代の典型的な中小企業のオヤジを見たのでございました。

神経ブロック

 ある方から「肢端紅痛症」という難病の方の施術について意見を求められました。

 この病気の名前は初めてきくものでしたが、足裏に熱を持ち、酷い場合はその熱が全身に回ってしまう、という症状のクライアントさんは診たことがあります。
 あ~なるほど、あの患者さんは「肢端紅痛症」という病気だったのかぁ~。

 ずいぶんの昔のことで、本人が知らない以上、こちらも調べる方法もなく、変わった症状だなぁ、という強い印象を持っていたので覚えていたわけです。
 昔のことですから、知識もなく、施術技術もしっかりしたのものじゃありませんでした。

 数回の施術の後、来院されなくなりましたから、その後の経過を知ることはありませんでした。多分、さほど変化はなかったのでしょう。

 今なら、既往歴や事故歴などを充分聞き出し、足の施術はメインにしながらも全身的なアプローチで臨むでしょうね。

 現在の知識や経験を駆使して、頭蓋的、経絡的に想定できることを述べさせて頂いたわけですが、原因は極めて個別的でもあり、複合的でもありますから、施術者が施術していく中で感じ取っていくしかないでしょう。結局はそれに尽きてしまうわけです。

 さて、後日、返信メールを再読しておりましたら、腰の治療で神経ブロックをやったのも原因の一つかも知れないと書かれておりました。
 最初、読んだときは気にも留めなかったのですが、そのときは(ん?腰の神経ブロック?
そういえばボクが診たクライアントさんも腰の治療で当時は最先端だった神経ブロック治療をしてな・・・)

 ずいぶん時間が経ってから思い出したわけですよ。
 神経ブロックと言っても幾種類かあって、痛みを止める硬膜外ブロック、下肢の血流量の増大を図る腰部交感神経節ブロック・・・・

 いずれも強力な治療法です。強力ではあっても手術よりは生体侵襲度は少なく、その恩恵を蒙った患者さんは数万のオーダーにはなるでしょう。
 特に腰部の交感神経節ブロックの威力は凄まじく、糖尿病による下肢末端壊死でさえ改善されるほど血流確保効果があると言います。

 治療というのは常にリスクがあります。逆にいえばリスクのない治療なんてのはありません。もし、この神経ブロックの作用が人によっては効き過ぎ、あるいはおかしな神経に作用して、身体一部の異常興奮をももたらしたとしたらどうでしょう?
 この難病の原因として理屈は合うわけです。

 もちろん医学的に検証することは出来ませんが、これも要因の一つである事は疑い得ないと思います。

 原因の一つが分かったからといって、ただちに手技で治せるというものでないことは当然です。ただ施術上の指標ができますからね。そうすると工夫も生まれてきます。つまり新しい技法の開発へとつながっていくわけです。

 個人的に振り返ってみると、新技法の開発はなんの脈絡もない純粋な感性で思いつく場合と理屈で考え抜いて到達する場合の二つがあって、有用性では変わりません。

 それはともかくとして、神経ブロックは強力ですが、強力であるが故に思わぬ副効果も生んでしまうこともあるということは認識しておくべきでしょう。

 費用対効果で考えると割りに合うものではないかもしれません。

 神経ブロックに触れたついでに・・・

 ある人-この人はR整体の使い手なのですが、五十肩の痛みを見かねてその整体術を施してくれました。

 R整体とは揉むな!押すな!延ばすな!の三禁療法の一つで、最近みかけることが多くなった整体術です。

 三禁縛りの中で何をやるの?

 簡単です。揺らすわけですよ。

 揺らし整体自体の歴史は古く、15~16年前にはすでに札幌ではサロンを構えていた施術院がありました。東京では相当古くからあったんじゃないでしょうか。

 様々に分派していて、色んな名前で出ていますから、どこが元祖なのかさっぱり分かりませんけど・・・・・(足揉みと同じだ)

 本格的な揺らし整体をやってもらう機会などありませんでしたから、内心(おお!これは良い機会だなぁ、やってやって!)てなノリでやってもらいました。

 されたことのない手技をやってもらうのは最近では数少ないドキドキ感とトキメキ感があって、実に新鮮で良いのです(やっぱ私は手技が好きなんですね)

 (ほうほう、なるほど~そういう構えから入るかねぇ、はぁ、そうか、そういう体勢にしてそう揺らすのか~中々心地良い・・・揺れる揺れる、巡る巡る因果の糸車・・・)
八犬伝風な施術でんな・・・(どんな施術だ!)

 施術される中、フト思い当たりましたね。

 これは星状神経節へアプローチしているなぁ、と。
 星状神経節は第七頸椎の横突起の前側にあって、後頸部からは骨が邪魔して触れることができません。前側からは強力な頸部筋群のため、これまた触れることができません。         
 したがってここに影響を与えるのはちょっとした工夫が要るんですね。
 腕神経叢からの間接的響きを使うとか、R整体のように揺らすとか・・・・

 リフレパシー整体では横向きと仰向けを使って、まず見たこともないような独特のフォームでアプローチするのですが、最近ではバイブレーション機器を併用することも多くなりました。
 フルフォード博士も星状神経節へのアプローチはほぼ全員に行っていたようです。その際、バイブレーション機器(パーカッションハンマー)を用いていたのは有名過ぎる話で、ボクもそれに倣ったわけです。

 さて、話を戻して。しばらく身を任せて心地よく揺らされておりました。
 するとやっぱ下部頸椎近辺が緩んでくるのが分かりますね。
 ここのコリは中々取りづらいのですが、マッサージや指圧の力づくで取るような不快感がなく、揉むな!押すな!という主張も分かるような気がしました。

 ここのコリが取れてくると、俄然、星状神経節の過緊張状態が回復して、副交感にスイッチされます。すると血流が回復していくのが分かりますね。
 コリを取ると物理的に回復するのは当然なのですが、交感神経節の異常興奮を抑えた結果として、つまり自律神経的な機序によって血流が回復したときというのはもち方が全然違うのです。素人の方は結果として分かるだけですが、ボクらプロはどういう種類のほぐれ方であるか、施術の最中から分かってきます。

 それはともかく。肩から上肢の血流が完全に確保されれば、相当に良くなるはずなのですが、ボクの場合は全然ダメ。
 なぜなら、もうその時にはすでにある筋肉の半分以上が断裂していて、それで仕事しているということ自体がミラクルな状態だったわけで、こういう状態ではどういう方法をとっても無理だったのです。軽いものだったらかなりの改善が見込めたでしょうに、惜しいことをしました。

 自律神経系、特に交感神経節へアプローチして、従来では考えられないような改善が非常に多くの症例で起こるということが分かってきております。

 西洋医学では直接的にその神経節に薬液注射を打ち、働きを鈍らせるわけです。ですからその手法をブロックと呼びます。つまり「神経ブロック」すると。

 たいして自然療法では、過緊張状態から脱出させます。本体、周辺組織を緩めることによって。したがって、逆にブロックを外すとか歪みを正すとかいう表現になるわけ。
 結果としては同じなのですが、手法の違いが表現の違いを生むわけですね。

 私の方法は3禁療法のような原理主義じゃありませんが、彼らが主張する以上の成果は前から挙げていましたし、これからも挙げ続けることでしょう。
(筋肉が半分千切れている人には無理だけどね)

帯状疱疹(たいじょうほうしん)

 帯状疱疹に罹った方の5年内ガン罹患率は通常の5倍~17倍という統計があります。

 このことの意味しているところは、ズバリ免疫力の低下でしょう。

 もともと帯状疱疹は水疱瘡に罹ったことがある人なら誰でも持っているありふれたウイルスが原因です。

 これが潜んでいて、その人の免疫力が低下したのをいいことに暴れだすわけですね。

 つまり統計は帯状疱疹とガンの直接的因果関係を表すものじゃなくて、両者の原因に共通している免疫力の低下を表現しているわけですよ。

 ですから、もし罹ったなら、まずもってなぜ自分がここまでの免疫力の低下を招いたのか・・・ちょっと振り返る必要があるでしょうね。

 過度のストレス、過労、暴飲暴食・・etc

 ちょっとヤバいかも・・・と反省するように出来ているわけですな、大概の病気は・・・

 反省するだけなら猿でもできるって古いCMもありましたけど、反省したのち、どのような行動をするかがその人の後の人生を決めることになるわけですよ。

 未来のことは誰も検証できませんが、幸い人には想像力というものが備わっています・・・・・
 血圧が高くて、血糖値が高くて、心臓で倒れたなら、このままヘビースモーカーを続け、深夜のドカ食いを続けてたら果たしてどうなるものか・・・・いくらパッパラパーな人間でも容易に想像が付くはず。
(ホントならその前に想像力が働かんきゃいかんのですが・・・)

 想像力が備わっている反面、自分だけはちょっとスペシャルじゃないかなぁ~という根拠のない楽観主義もまた人間の専売特許かもしれません。

 話がソレてしまいまいました。
 免疫力をアップするにはまず徹底的に交感緊張を解いていくしかないわけです。

 交感神経節を麻痺させる星状神経節ブロックという治療法が確立されているところをみても、これは必須中の必須でございまして、自律神経は自分ではコントロールできない以上、他人の手を借りるしかないのですよ。
 他人の手を借りるのがどうしても嫌だったら、インドに行って30年ばかりヨガの修行をしたらよろしいのです(ならば自分で自律神経をコントロールできるかもしんない)。

 免疫力がベラボーに下がっているシグナルが出ているわけですから、他人の手を借りたからといって罰など当たりますまい。

 そういう意味ではたまたま帯状疱疹はかなり一般的でもあり、統計もよく整っているわけですから、例として引き合いに出しました。

 あと膀胱炎なども免疫力低下の強力なシグナルです。

 これらの予兆があったり、病後は是非ともリフレパシーグループの施術院へお越しくださいませ。

特に痛みが残ってしまって長引いている方。

適応症であることが多いのです。

甲状腺

 更年期障害の時期と甲状腺機能異常がたまたま重なると、誤診する確率が高くなります。

 自律神経系の症状ですから、症状だけでは見分けが付かないことになるのは当然。
 「更年期ですね」と医者から言われ、(それじゃしょうが無いわねぇ)と我慢しているうちに、どうにもこうにも収まらないほど症状がキツクなって、病院を転々としているうちに見つかると、そんなパターンが多いらしい。

 甲状腺機能からくる愁訴は意外に多く、特に女性に多いのは周知の事実でしょう。

 検査数値がハッキリ異常と出ない場合も、症状は個人差が大きいので結局、見逃しているケースも散見されます。

 要治療の場合はこれは病院で治療するしかないのです。
(手術を奨められていた方が足もみだけで治ったという例はありますけれども、普遍的に必ずそうなるかというと責任が持てませんし、これで治してやるから医者に行くな、というと医師法違反に問われますからね)

 東洋医学的な観点から言えば、甲状腺は肝経の支配が強く、たまたま、足裏では甲状腺の反射区が肝経になります。

 だから、反射区が効いたのか、経絡が効いたのかを立証することはできません。

 経絡とするならば、首に肝経が来ていますから、頚部の施術を重視すべきでしょうね。
 病変が進み過ぎている場合はいくらやっても難しいですから、体調を整えるという意味で行う態度が望ましいと思います。良い影響を必ず与えると確信していますけど。

 甲状腺の中でもバセドウ病は心包経の異常から来るケースが多く、心包経反応ゾーンである胸椎の7、8、9番あたりに変移があるか、カチコチに固まっている場合が多いもの。
 頚部の心包経は非常に処置しづらい位置にありますから、直接的にはちょっと無理かもしれません。その代わり、上肢(前腕&上腕)は施術しやすい部位を走行しております。

 それらを処置すると、完治はできなくとも、症状がずいぶん和らぎます。

 何でも治せるというわけではありませんが、手技は一般に考えられている以上に守備範囲が広く、可能性に満ちあふれているので試す価値は充分にあるわけです。

スジ揉み

昨日のクライアントさんには考えさせられました。

明生館オープン間もなくなからご贔屓頂いている方です。

でも中高年のオアシスと言われている明生館のクライアントとしては若いんですよ、整体初体験がウチでしたからねぇ。

当時を思い出します。可愛い姪が初めて整体院に行くにあたって、変なところだったら大変!とばかりに、先に伯母さんが偵察にやってきました。その伯母さん、今でも来院していますけど。
(スタッフKも可愛い姪がいるようで、気持ちがよく分かる、と共感しておりましたっけ)

ともあれ、仕事が相当に忙しい様子。
その仕事がまたグラフィック、デザイン系でパソコンを使いまくり、目を酷使しまくり状態です。目が極端に悪いので、コンタクトをしているうちに、ドライアイになってしまって、もはやコンタクト装着もできないそうです。(メガネのお姉さんになってしまいました)

当院オープン以来、時々、耐えられなくなってくると、来院するという不定期リピーターなのですが、最近は忙しく過ぎて、中々お見えになれませんでした。しかし、肩こりはいかんともし難く、仕事に影響が出てしまうくらい。

会社のすぐ近くの整体屋さんで、30分程肩を解してもらって仕事に復帰するというパターンを繰り返していました。身体をダマシダマシ使っていると・・・・そんな生活だったそうです。

ところが、そこの整体屋さんはスジ揉みをするらしく、肩周辺は我慢できるにしても、首スジだけはどうにも我慢できない不快感があるそうな。
 
そこで、首だけはパス(首を揉まないでくださいとお願いするとのこと)。
スジ揉みは按摩、マッサージの変法で昔からある技法です。
 
このやり方で満足する人もいるわけですから、現在も続いているわけですし、それを採用するお店もあるわけですが、ある種の人たちには耐え難いものになります。

何を隠そう小生も、スジ揉みをされると揉み返しが酷くて、翌日にはパンパンに腫れ上がってしまいます。

特に首はキツイ!首スジをゴリゴリと音が出るくらい弾くように横に揉むのですから、たまったもんじゃありません。そういう個人的な体質もあって、スジ揉みは絶対にしないのですが、これでないと満足しない人もいるわけですから、人の感性とは様々です。
(慣らされた、というのが真実でしょうけど)

そのクライアントさんは小生の感性に似て、スジ揉みが苦手なのはある意味幸いなのですが、困ったことに肩は解され、肝心の首は手付かず。
 
どうなるか?
首、特に後頭骨の近いところにコリがドンドン溜まっていきます。これではメマイが出ても、吐き気がしても不思議ではありません。
(事実、そういう症状で来院したのですが)

術後、愁訴の消失をみましたが、問題はそれがいつまでもつか・・・・
(まだ若いのでもってくれると思いますが・・・・なにせライフスタイルが・・・・)

このご時勢、仕事を変えるわけにも行かず、このように自分の身体をダマシながら続けている方も多いのでしょうね。
クイックマッサージが流行るわけだ。
 
手っ取り早く解すには「スジ揉み」ということになるのですが、述べたようにかなり弊害があります。

いつも思うことですが、これらスジ揉みをする所謂プロと言われている人達は自分がされて不快に思わないのかな?と。

これはこの業界の七不思議の一つなのです。

※因みにその方、肩は解されてまだ良いほうだと、おっしゃっていましたが、全然です。余計に硬くなっていました。より優先度の高い不快感を感じるという脳の錯覚です。首のコリを強く感じると肩は気にならなくなる。胃が猛烈に痛むとき、肩こりなど感じている暇がないのと同じ現象です。だから全身的アプローチが必要なのですが、一般には中々理解されないところにもどかしさを感じますね。

プチ更年期

若い女性でも、まるで更年期のような症状を訴える人が増えています。
更年期障害は不定愁訴というくらいですから、その症状はヒトによって様々です。

例えば・・・
慢性的肩、首こり
頭痛
冷え
のぼせ
めまい
生理不順
イライラ
疲労、倦怠感
不眠
ウツ的気分
睡眠中、何度も目を覚ます
etc(要するに病気じゃないのに具合がよろしくないという症状です)

普通は閉経をはさんだ前後に起きるものですが、今や、20代から30代でも起きてしまう例が多いのです。

それで付いた名前が「プチ更年期」。
名前の可愛さに惑わされてはいけません。
結構、深刻な問題ですよ。

病院などでよく言われる原因は、過労、ストレス、過激なダイエットなどです。
異論はありません。引き金にはなるでしょうね。
(その他、パソコンワークも関係すると思う)

本当の更年期障害とプチ更年期障害は少し発症メカニズムに違いがあります。
本当の更年期障害は卵巣の役目を終えたため、女性ホルモンの放出を命ずる脳幹部(間脳-視床下部)が混乱してしまい、自律神経の運営に支障をきたすというもの。

プチ更年期障害はまだ若い状態ですから、卵巣の老化はありません。成熟し安定しているはず。

つまり、卵巣自体(当該部に病変がないとして)には問題がないわけです。
どこに問題があるかというと、脳幹部(間脳-視床下部)に一方的な原因があることになります。その原因を作る原因として、先に挙げたものが列挙されることになります(過労、ストレス、ダイエット)

放っておくと、最悪の場合、若くして閉経が起きてしまいます。その弊害として、確実に不妊にはなりますし、骨粗鬆症にも動脈硬化にも罹ってしまうわけですね。

30代で閉経はツライものがありますよ。
ホルモン療法が主になりますが、ホルモン療法を忌避する方も多いようです。

さて、卑しくも自然療法家の立場である小生が、病院通いだけを薦めて終わらせるわけにはいきません。

反射区療法家なら、脳幹部が重点となることは言わずもがな、でしょう。
もう少し突っ込むと、視床下部の働きには腎経が大きく関与しておりますから、腎経も重点ポイントとなります。

何度か書いていますが、子宮の反射区に腎経の要穴が集まっておりますし、外踝下の卵巣の反射区には腎経の陰陽関係にあたる膀胱経の要穴もあります。

リフレクソロジストなら期せずして、腎-膀胱経ポイントを押えていることになるわけで、ことさら、これを強調するつもりはありません(そういえば、腎臓の反射区そのものも腎経の要所ですわね~。輸尿管も尿道の反射区もそうです。こうして見ると、反射区機序が働いたのか経絡機序が働いたのか、区別がつきませんね)

そんなこんなで「プチ更年期障害」にはリフレクソロジーが結構効くのでした。

リフレとは全く違う視点で見ますと、経験上、プチ更年期障害の方や不定愁訴の方は上部頚椎に問題がある場合が多いものです。

ここの微妙なズレが脳幹の働きを低下させているようなのです。
ネックセラピーの中で調整し、クラニアル系で脳幹そのものを活性させると、リフレクソロジーだけでは対応できない方にも効果的。

※上部頚椎とは1番、2番頚椎のこと。環椎、軸椎とも言います。
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