ある方から「肢端紅痛症」という難病の方の施術について意見を求められました。
この病気の名前は初めてきくものでしたが、足裏に熱を持ち、酷い場合はその熱が全身に回ってしまう、という症状のクライアントさんは診たことがあります。
あ~なるほど、あの患者さんは「肢端紅痛症」という病気だったのかぁ~。
ずいぶんの昔のことで、本人が知らない以上、こちらも調べる方法もなく、変わった症状だなぁ、という強い印象を持っていたので覚えていたわけです。
昔のことですから、知識もなく、施術技術もしっかりしたのものじゃありませんでした。
数回の施術の後、来院されなくなりましたから、その後の経過を知ることはありませんでした。多分、さほど変化はなかったのでしょう。
今なら、既往歴や事故歴などを充分聞き出し、足の施術はメインにしながらも全身的なアプローチで臨むでしょうね。
現在の知識や経験を駆使して、頭蓋的、経絡的に想定できることを述べさせて頂いたわけですが、原因は極めて個別的でもあり、複合的でもありますから、施術者が施術していく中で感じ取っていくしかないでしょう。結局はそれに尽きてしまうわけです。
さて、後日、返信メールを再読しておりましたら、腰の治療で神経ブロックをやったのも原因の一つかも知れないと書かれておりました。
最初、読んだときは気にも留めなかったのですが、そのときは(ん?腰の神経ブロック?
そういえばボクが診たクライアントさんも腰の治療で当時は最先端だった神経ブロック治療をしてな・・・)
ずいぶん時間が経ってから思い出したわけですよ。
神経ブロックと言っても幾種類かあって、痛みを止める硬膜外ブロック、下肢の血流量の増大を図る腰部交感神経節ブロック・・・・
いずれも強力な治療法です。強力ではあっても手術よりは生体侵襲度は少なく、その恩恵を蒙った患者さんは数万のオーダーにはなるでしょう。
特に腰部の交感神経節ブロックの威力は凄まじく、糖尿病による下肢末端壊死でさえ改善されるほど血流確保効果があると言います。
治療というのは常にリスクがあります。逆にいえばリスクのない治療なんてのはありません。もし、この神経ブロックの作用が人によっては効き過ぎ、あるいはおかしな神経に作用して、身体一部の異常興奮をももたらしたとしたらどうでしょう?
この難病の原因として理屈は合うわけです。
もちろん医学的に検証することは出来ませんが、これも要因の一つである事は疑い得ないと思います。
原因の一つが分かったからといって、ただちに手技で治せるというものでないことは当然です。ただ施術上の指標ができますからね。そうすると工夫も生まれてきます。つまり新しい技法の開発へとつながっていくわけです。
個人的に振り返ってみると、新技法の開発はなんの脈絡もない純粋な感性で思いつく場合と理屈で考え抜いて到達する場合の二つがあって、有用性では変わりません。
それはともかくとして、神経ブロックは強力ですが、強力であるが故に思わぬ副効果も生んでしまうこともあるということは認識しておくべきでしょう。
費用対効果で考えると割りに合うものではないかもしれません。
神経ブロックに触れたついでに・・・
ある人-この人はR整体の使い手なのですが、五十肩の痛みを見かねてその整体術を施してくれました。
R整体とは揉むな!押すな!延ばすな!の三禁療法の一つで、最近みかけることが多くなった整体術です。
三禁縛りの中で何をやるの?
簡単です。揺らすわけですよ。
揺らし整体自体の歴史は古く、15~16年前にはすでに札幌ではサロンを構えていた施術院がありました。東京では相当古くからあったんじゃないでしょうか。
様々に分派していて、色んな名前で出ていますから、どこが元祖なのかさっぱり分かりませんけど・・・・・(足揉みと同じだ)
本格的な揺らし整体をやってもらう機会などありませんでしたから、内心(おお!これは良い機会だなぁ、やってやって!)てなノリでやってもらいました。
されたことのない手技をやってもらうのは最近では数少ないドキドキ感とトキメキ感があって、実に新鮮で良いのです(やっぱ私は手技が好きなんですね)
(ほうほう、なるほど~そういう構えから入るかねぇ、はぁ、そうか、そういう体勢にしてそう揺らすのか~中々心地良い・・・揺れる揺れる、巡る巡る因果の糸車・・・)
八犬伝風な施術でんな・・・(どんな施術だ!)
施術される中、フト思い当たりましたね。
これは星状神経節へアプローチしているなぁ、と。
星状神経節は第七頸椎の横突起の前側にあって、後頸部からは骨が邪魔して触れることができません。前側からは強力な頸部筋群のため、これまた触れることができません。
したがってここに影響を与えるのはちょっとした工夫が要るんですね。
腕神経叢からの間接的響きを使うとか、R整体のように揺らすとか・・・・
リフレパシー整体では横向きと仰向けを使って、まず見たこともないような独特のフォームでアプローチするのですが、最近ではバイブレーション機器を併用することも多くなりました。
フルフォード博士も星状神経節へのアプローチはほぼ全員に行っていたようです。その際、バイブレーション機器(パーカッションハンマー)を用いていたのは有名過ぎる話で、ボクもそれに倣ったわけです。
さて、話を戻して。しばらく身を任せて心地よく揺らされておりました。
するとやっぱ下部頸椎近辺が緩んでくるのが分かりますね。
ここのコリは中々取りづらいのですが、マッサージや指圧の力づくで取るような不快感がなく、揉むな!押すな!という主張も分かるような気がしました。
ここのコリが取れてくると、俄然、星状神経節の過緊張状態が回復して、副交感にスイッチされます。すると血流が回復していくのが分かりますね。
コリを取ると物理的に回復するのは当然なのですが、交感神経節の異常興奮を抑えた結果として、つまり自律神経的な機序によって血流が回復したときというのはもち方が全然違うのです。素人の方は結果として分かるだけですが、ボクらプロはどういう種類のほぐれ方であるか、施術の最中から分かってきます。
それはともかく。肩から上肢の血流が完全に確保されれば、相当に良くなるはずなのですが、ボクの場合は全然ダメ。
なぜなら、もうその時にはすでにある筋肉の半分以上が断裂していて、それで仕事しているということ自体がミラクルな状態だったわけで、こういう状態ではどういう方法をとっても無理だったのです。軽いものだったらかなりの改善が見込めたでしょうに、惜しいことをしました。
自律神経系、特に交感神経節へアプローチして、従来では考えられないような改善が非常に多くの症例で起こるということが分かってきております。
西洋医学では直接的にその神経節に薬液注射を打ち、働きを鈍らせるわけです。ですからその手法をブロックと呼びます。つまり「神経ブロック」すると。
たいして自然療法では、過緊張状態から脱出させます。本体、周辺組織を緩めることによって。したがって、逆にブロックを外すとか歪みを正すとかいう表現になるわけ。
結果としては同じなのですが、手法の違いが表現の違いを生むわけですね。
私の方法は3禁療法のような原理主義じゃありませんが、彼らが主張する以上の成果は前から挙げていましたし、これからも挙げ続けることでしょう。
(筋肉が半分千切れている人には無理だけどね)